僕はこの4カ月ほどFT-891を使ってきた。
安価で超小型で地味な見た目だけど、基本性能は従来の”モービル向けHF機”とは比較にならないほどに向上した「保守本流のHF機、の系譜」だと僕は認識しており、サブ機としてはかなり満足している。
FT-891はというと、FT-857と似たようなサイズだからなのか、比較していろいろおっしゃる人もいるようだ。しかし
- 857は「いろんなバンドに出られるよう無理矢理詰め込んだアナログ機」
- 891は「今時のHF機の使われるRF関連技術をコンパクトに詰め込んだDSP機」
な訳で、メーカーとしてはコンセプトが異なる別カテゴリーとして顧客に訴求しようとしている(つもりの)はず。
#891はそのコンセプトが弱いのかもしれないけれど。
FT-857は万人受けのする、いい立ち位置のリグ。
実の所「地味ながら基本性能がいい」ものよりも、「性能はぼちぼちでも、超小型でいろんなバンドに出られる」とか「グラフィカルでケレン味がある」もののほうが、マジョリティに対して訴求力があるだろう。
- 43万局余のアマチュア無線局の3-4アマが8割以上であり、うち23万局はHFのいずれかのバンドに出られる設備を届け出ているらしい。しかしそのほとんどはヘビーユーザーではない。「7/18/21MHzのSSBでマイク握れればもう十分」な方がほとんどだろう。
- 実の所、857であれば上掲の欲求を満たしたうえにVUにまででられちゃうのだから、お得感満載でうれしいはず。実際のところ、857をCW機にDXにとガチに使おうとする人はそんなにいなかろう。変復調まわりのアーキテクチャーが古かろうが、USBでPCとリンクできなかろうが、実害はない。実売7万そこそこのFT-857に、もう2万掛けて455kHZ IFのCWフィルターを組み込むのはかなり酔狂な方だと思う。
FT-891に立ち返って考えると
僕が使い倒してきた限り、891はSSB・CWの送受信に対して固定でも十分実用的であり、リニア焚いてDXコンテストでランニングするにはさすがに厳しいが、ベアフットのHF機としてならキッチリ使える性能を有している。
となると「車にモービルHF機として積み気楽に運用」的な用途には857の性能で十分で、実は891は”過剰スペック”なのかもしれない。
#や、車運転しながら混信除去ツマミを丁寧にいじろうもんなら事故るでしょ。
要は、同価格の安くて小ぶりなショートケーキが並んでいるとき、「製法が古く甘ったるくて、冷凍物の苺が乗ってるの」と「今日日の製法を取り入れて、甘味抑えめだけど結構美味で、苺は乗っていないの」とでどっちを選びますか、という話。