はじめに。
幣日記では、「ローバンド用スリーブダイポールアンテナ」(SDLB)として、鉄塔からスローパーダイポール状に吊り下げる、という張り方で、スリーブダイポールを検証してきた。
ご参考:端部給電出来るダイポールとコブラアンテナの話。、検証実験。SDLBアンテナを作ってみた。
同軸を使ったスリーブダイポールは、日本ではコブラがとぐろを巻く形状から?コブラアンテナなどと呼ばれている。英語ではcoax verticalとか(resonant) feedline dipoleなどと呼ばれているらしい。
基本の形状は以下。
Cited from N5ESE's Look at the RFD (Resonant Feedline Dipole)
「無線機―同軸(任意長)―フェライトチョーク―同軸(1/4波長)-単線(1/4波長)で」、フェライトチョークより右側がダイポールを成す。
cited from 50MHz自作コブラアンテナ - kouzi's blog
以前の検証でわかったスリーブアンテナのメリットは、ともかく以下である。
- フルサイズのダイポールであること。
- 非接地型なのでアースの考慮が不要。
- フルサイズなので帯域を広く取れる。
- アンテナとして放射効率がよい。
- アンテナの端部から給電できること。
- 形状が多少ベント、傾斜しててようとそれなりに動作すること。
ただし、同軸部とスリーブ部を高周波的に切り分ける(アイソレーションをとる)ため、ハイインピーダンスかつ機械強度(主に引っ張り強度)がそれなりにしっかりしたフェライトチョーク(コモンモードチョーク)をかます必要がある。
特にローバンドでは、耐圧を確保しつつハイインピーダンスを得るにはチョークが大掛かりになる。
移動運用において上記のメリットはなかなか魅力的ではある。
再現性と放射効率が良好で、周辺環境・設置形状の影響があってもそれなりに動作してくれる「フルサイズダイポール」を、同軸スリーブ方式で端部給電化することにより、安価で売られている6.3m竿 x 1本で軽々と持ちあげて(給電点は竿の基部にくくりつけて)設置できる。
これって、移動運用用(ないしは短期滞在用)アンテナとして◎ではなかろうか?
- 移動運用を行う場合、アンテナ設置環境は常に変わる。その状況でアンテナをなるべく再現性良く、短時間で展開するのはむずかしいものだ。だからこそ、国内の7MHz移動運用の定番は、再現性抜群なV型ダイポールになっちまう。
- 車で移動するとなれば何でも積んでいけるが、担ぎ上げで運用するとなると、重いもの・長いものをいっぱい持っていくわけには行かない。ハンドキャリーでのトータルの重量・サイズを減らすうえでは、ワイヤー系かつ釣竿1本で建つ移動用のアンテナは魅力的である。
- 釣竿1本であっても接地型のバーチカル系は再現性が悪い上に、アンテナのそばにいる運用者自身が、アンテナ性能に悪影響を及ぼす電流腹の遮蔽物となってしまう。
- インバーテッドVを張ろうとすると、給電点を持ちあげる必要があり、強力なグラスファイバー竿(太くて重い)が必要となる。
- つーか10mの竿を2本とか電車で抱えていると、重いだけじゃなくて立派に不審者である。
- 端部給電は移動運用の際引き回しが容易な上に軽量化につながり、いいことづくめ。
- 端部給電という意味ではEFHWアンテナもあるが、ハイインピーダンスを1:49アンアンとかで50Ωに落とす方式の端部給電では、周囲の影響を普通のダイポールに比べて受けやすいため、移動運用向きかというと悩ましい。
- EFHWの方式によっては、カウンターポイズの長さ・張り方、という再現性を下げそうな不確定要素がくっついてくる。
- 移動運用先の限られた空中線電力(へたするとQRP)をなるべくよく放射するためには、同調型・モノバンド・フルサイズがいい。バンド幅が広ければアンテナチューナーを持って行かずに済む。
ということで、移動運用用に作ってみよう。
ローバンド用スリーブダイポール(SDLB)を7MHzの移動運用を想定して軽量かつ実用的に作ることを考えてみた。
この際なので、まず下調べ。
参考:
Building and Analyzing a Resonant Feedline Dipole(UC Berkeley Amateur Radio Club)
N5ESE's Look at the RFD (Resonant Feedline Dipole)(N5ESE)
End-Feeding a Center-Fed Vertical Dipole(K9YC)
Revisiting the Resonant Feed-line Dipole(KO4WX)
同じようなことを考える人はゴマンといるものだ。
基本、フェライトチョークはガッツシ入れなさいとある。K9YCのプレゼンには、ローパワーでもインピーダンス7.5kΩ、100Wごえなら15kΩはとろうぜと書いてある。これってインターフェア対策で挿入されるコモンモードチョークよりも半桁高い*1要求。
アンテナの動作が「チョーク~無線機」同軸長の影響を受ける場合、アイソレーションに失敗していることを意味するだろう。
電波障害(インターフェア)対策 評価2(JR7IBWさん)
コモンモードチョークをNanoVNAとFA-VA5で測定する(JH4VAJさん)
インターフェア・コモンモード障害対策 (12)(JL4ENSさん)
コモンモードチョークとしては、やっぱりW1JR巻き2段でトライしてみたい。ただし、小型軽量なフェライトコアで。
*1:インターフェアなら3~5kΩ取れればセーフとみなされていると思われる