ダイポールアンテナはシンプルにして効率が良い素敵アンテナであり、特にローバンドでは地面と平行にピンと張ったダイポールがなんだかんだでよく飛ぶのである。
ただ問題は給電部の取り回しであり、双エレメントのまんなかに重たいバランと同軸ケーブルがぶら下がるため、それを支えるためにアンテナワイヤーの素材には(引っ張り強度等)気を使うことになる。
ダイポールにはバリエーションが多数存在するが、片側の端部から給電出来るエンドフェッドタイプも幾つかあり、マッチング回路(数kΩぐらいまでハイインピーダンスになるので)を介して半波長の単線に給電する方式は、「電圧給電ダイポール、ツェップライクアンテナ、エンドフェッドアンテナ、英語ではEnd-Fed Half Wave(EFHW)」などと呼ばれる。
cited from アンテナ大研究!(JAIA)
たいていは給電部に(LCによる)マッチングネットワークか、フェライトコアをもちいたインピーダンス変換*1をかます。J型アンテナ(J-Pole antenna)も、1/2波長のエレメント+端部にスタブマッチングという意味では片側給電ダイポールの一種といえなくもない。*2
その手のLCネットワークはこれまた耐圧と防水で課題であり、耐圧を見誤りパワーを掛けるとコンデンサーが焼ける可能性もある*3ので、いろいろ悩ましい。
そう言えば、スリーブアンテナ(あるいはスリーブダイポール)というアンテナがある。
cited from 1/4 Wave Ground Plane vs Verticle Dipole | QRZ Forums
スリーブ=袖に腕を通したような形状をしていて、アマチュアではしばしば同軸ケーブルをスリーブ部分のエレメントに使用する。
1/4波長の同軸を高周波的に同軸ケーブルから分離し、その先に1/4波長の単線を取り付けた垂直アンテナであり、同軸の外皮をスリーブエレメントとして使用することで、垂直ダイポールとして動作する。これは実質片側給電である。
さらには、その変形でコブラアンテナってのも存在する。
cited from 50MHz自作コブラアンテナ - kouzi's blog
同軸ケーブルのうち「アンテナに供される部分」と「通常の同軸フィーダーとして用いられる部分」を高周波的に分離する必要があるが、それを単に同軸ケーブルの途中にフェライトコアに巻きつけることで行うものだ。
主にVHFで簡易アンテナとして時折使われ、おそらくコブラがとぐろを巻いている姿を想起させるからだろう、”コブラアンテナ”と時に称される。ちょっと男の子回路を刺激されるかっちょいい名前だ。
でこのアンテナ、HFで使ってるという話はあまり聞かない。
しかしこの方式だと「1本の単線+フェライトコア+同軸ケーブル」でアンテナが出来上がり、高周波的にはアンテナの中心点から給電しているが、ケーブルの引き回しは端部からで済んでくれる。*4
僕はスリーブアンテナをHF、それもローバンド用に使ってみたいと思っていた。
理由は、ローバンドの長い半波長ダイポールを、「簡易な方法で端から給電」したいから。
- ローバンドのアンテナは、ノイズや打ち上げ角を考えると、水平なエレメントを可能な限り地上から高いところまで離して設置するに越したことはない(ロータリーダイポールや2エレをタワーのなるべく高い所に上げる等)が、そうもいかないとなるとワイヤーアンテナのお世話になることになる。
- 接地やラジアル線を要するバーチカルアンテナは垂直部が1/4波長の長さですむが、接地環境への依存性が非常に高い。特にアンテナ周囲の遮蔽物とGNDの良し悪し(デメリットのほうはground lossと総称される)によってパフォーマンスが天と地ほどの差になる。そして残念ながらうちのシャックはGNDがよくない。
- もしシャックで良好な接地が取れないならば、非接地型アンテナを(ダイポールかそのバリエーションで)目指す方が無難だ。とはいえローバンドではフルサイズ垂直ダイポールを設置するのは容易ではない。1/2波長のフルサイズが垂直に張れるのは、アマチュアレベルではせいぜい7MHz位までではなかろうか。
- 更にそれを端部給電で実現できれば、水平であれ垂直であれエレメントは引き回しやすくなり、設置方法の自由度も俄然上がる(逆V、逆L、ベント、スローパー・・・)
というわけである。