駄目社員はむの日記

USO800 certified.

番外編。K2は何故いい?

最近、米Elecraft社のK2やK3の受信が良いと話題のようですね。
K3はDSP機としてすごい代物なのですが、値段も中身も異なっているので、とりあえずまた今度雑談することにしますが・・・


昨今の標準的な日本製HF機とK2の決定的な違いは、ジェネラルカバレッジ受信(死語;HFの広帯域連続受信)ができるようアップコンバージョンのトリプルスーパーヘテロダインを採用しているか、ハムバンドに絞った周波数帯でシングルスーパーヘテロダインの回路を極めたか、でしょう。
K2の受信部は「ダイオードDBMを初段ミキサーに使ったシングルスーパー」という特にシンプルな回路構成*1で、「自作機かよ!」と言うぐらいに少ない素子で組まれていたりしますが、回路図をみてみるとシンプルなのにそこかしこに細かい工夫が見て取れたりします。

日本メーカー製でシングルスーパーの受信部を持つHF機

が、いつごろ作られていたかと考えると、コリンズタイプ・ダブルスーパーであるFT-101, TS-520全盛期の後、つまり機種で言うとTS-820, TS-530, FT-901, FT-101Z辺りの世代(1970年代末〜1980年代初頭)になりますから、四半世紀以上前には絶滅したということになります。


余談ですが、ケンウッドのアマチュア用HF機の受信部のその後を振り返ると、820の後継機で名機と讃えられるTS-830では、455kHzに2nd IFを加えてダブルスーパーとなりましたが、この構成は実はケンウッド初代にして唯一のようです。シングルコンバージョンの高級ソリッドステート機としてはTS-180というのもありましたが、技術偏重が過ぎたせいかいろいろキワドい動作をするマシンという雰囲気で、完成度はお世辞にも高いとは言えないものでした。
以後はアップコンバージョン&ゼネカバ受信の時代が到来。トリプルスーパーの高級機TS-930とダブルスーパーの初級機TS-430が登場してしまい、元の構成に戻る事は二度となかったので、ケンウッドのシングルスーパーヘテロダイン機と言うのは、TS-120, 130, 180, 530, 820の5シリーズのみだと記憶しています*2


そういえばアイコムの話を最近していたのでアイコムはどうだったかと思い出すと、シングルコンバージョンが出ていた短い時期には、出していないんですね。アイコムはしばらくHF機から遠ざかっていて、戻ってきたのがIC-710→720といきなりジェネラルカバレッジ機だったので、シングルコンバージョンの名機がないのです。

しかしそもそもジェネカバ受信というのは

(アマチュア無線の交信をするための)アマチュア無線機にとってはオマケのようなものでしょう。
オマケのために無駄に受信部のBPFを広げ、多信号特性などといった無線機本来の基本性能を犠牲にする必要は、本来はないわけです*3。本来、バンド内での送受信重視で狭帯域に仕上げた方が出来がいいに決まっています。


実は、ダブルコンバージョンであるTS-830や、アップコンバージョンタイプなのにハムバンド専用*4であるIC-740あたりを安く買ってきて、徹底的にリファインするとすごい受信機が出来上がるのかもしれません。
#局発やVFOに昨今のDDSを使うだけでも、C/Nは桁違いにいいはずだしね。

*1:ハムの国家試験に出てくる通りのお手本的な回路で、自作SSB機ではごく標準的ですね。

*2:オールソリッドステート(死語)に限るとTS-120, 130, 180ぐらいのものですが、120/130は入門用・移動用コストダウン機の域を出ない作りです。

*3:それは、オマケである広帯域受信機としての側面が半ばメイン機能と成り果てた、V・UHF機にもいえることです。

*4:受信のトップには狭帯域のBPFが入ってます