昔、西部警察という武装警察ドラマがあった。西部劇における無能な保安官級に”とりあえずぶっ放す”荒唐無稽さが売りだったと思う。
劇中に登場する機動車両には、LEDが無駄にパカパカ明滅する(当時としては未来的な意匠の)無線機が積んであったことを覚えているだろうか?
それこそが八重洲無線のFT-707である。
80年代初頭よりアマチュア無線機としても一般販売されて・・・じゃなくて実際アマチュア機(車載向け)として売られていた。AM送信できるためであろうか、ショップで水晶を交換する改造を施され(大電力の)違法CBとして売られてたことでも知られる。
#トラックに積まれてた違法CB機の定番と言ってもいいぐらいだ。
FT-707ってどんな無線機だったか、思い出す。
- 小さいくせに存在感がある見た目。ダイキャストの重厚なフロントパネル。①7セグメントの周波数表示(周波数カウンタ) ②LEDによるS/パワーメータ、③でかいアナログVFOダイアル、が目を引く。
- 受信部はシングルコンバージョンで単純な構成であり、今時の7MHzの荒波に飛び込んでいくための無線機には厳しく、現代的には”趣味の交信向け”だろう。WIDTHがついてるからといってそんなに実戦的でもない。
- VFOノブは妙に凝った作り。その奥には、古典的なアナログVFOユニットが丸々入っている。VFOの直線性はなかなかいい。
- 80年代初頭当時、コンパクトな小型オールバンドリグを見事完成させたことは、間違いなく称賛に値する。しかし70年代の実装技術と力技で組んじゃったので、内部配線はごちゃごちゃで、極度に多い接点が接触不良を起こしやすく、現在となってはメンテナンス性は非常に悪い。
- 実の所、今中古市場に出回っている707の多くが、違法CB改造機かもしれない。707が100W機、707Sが10W機だが、割と電話級の10Wが真面目に守られていた80年代初頭当時に売られていたはずなのに、10W機の中古をほとんど見かけたことがないのも、示唆的である。
FT-707とその前後。
- FT-707の回路構成の手本は、FT-101Z(1978〜)とFT-107(1979〜)に思える。ブロックダイアグラムを見比べればすぐに類似性に気付けると思う。プリミックスVFOと、9MHz帯をIFにとったシングルコンバージョンの受信部(WIDTH付)はそっくり。YAESUカスタムチップな周波数カウンタIC*1も同じだ。要は、101Zをベースにファイナルを固体化し多少新技術を加えたものが107、それをダウンサイズしたのが707なのかもしれない。
- 707直前の八重洲無線社製コンパクトHF機は、FT-7(10W機)/FT-7B(50W機)(1978-)だった。いずれもオールソリッドステートだったとはいえ、FT-7は受信ノイズは多いわ送受信動作がきわどいわで、お世辞にも実用性が高いとは言い難い無線機だった。ここまでくると前近代の遺物である。ファイナル回りの構成も今見るとかなり珍妙*2な上、自作機と見紛う実装。
- 一方、707の後継機はFT-77。”詰め込みすぎ”な707の反動だったのか?機能を極度に削った結果、フロントパネルでいじる要素がほとんどなくなり、これはこれで迷HF機となってしまった。
- その後八重洲からは、FT-77から一年と待たずFT-757というコンパクト機のベストセラーかつロングセラーが誕生する(1983?)が、前夜まではずいぶん迷走していたのである。
#サラエボオリンピック(汗