駄目社員はむの日記

USO800 certified.

○IC-740。なかなかの中級機。でも現代的には使いづらい。

80年代初頭に出た、IC-730の上位の位置づけの中級機。70年代のエンジニアリングの香りはなお残すも、ローバンドからハイバンドまで使えるなかなかのリグ。

  • 受信性能はなかなか良好で、フロントエンドにダイオードミキサーを採用しているお陰かノイズが少なく静かで、混変調にもかなり強い。ローバンドではIC-750よりいいと仰る人もいる。
  • 740の受信部に特徴的な興味深い機能の一つが、なんとAGCだったりする。初めて使う人は確実に面食らうはず。AGCには、八重洲の昔のリグのようにファストアタック・スローリリースに固定されているものもあったが、大抵のリグではモードによって時定数の設定をFAST/SLOW(/OFF)を切り替えて使用するものである。しかし、740のAGC設定はVR式になっていて連続可変(絞り切るとOFF)なのである。細かく設定したい人には嬉しいかもしれないが、そこまで神経質な人はあまり居ないだろう。四半世紀前の740オーナーは、弱い信号を上手く浮かび上がらせるためにこれを駆使してていたのだろうか。
  • メインダイヤルは、見た目はプラスチックだが内側は無垢の鉄製で、割と高級感がある回し心地。ただしVFOの周波数などが電源をOFFにするたびにリセットされる、手動で周波数ステップを変更する必要がありVFOのフィーリングが悪いなど、現代リグに比べるとPLL機の操作性としては洗練されておらず、今使うとクセがかなり気になると思う。
  • 受信音はIC-750よりも柔らで、聴感上のダイナミックレンジが広め。ただしCWの受信音には重みが無く少しフワフワした音である。運用上、CWのブレークインがセミのみというのは、当時としてはしかたがないかもしれない。
  • PBT/NOTCHはまずまず効くが、スライドボリュームで使いずらく、またボリュームがガリやすい。発売当時、ウッドペッカー(当時ソ連から流れてきたOTHレーダー)に対するNARROW/WIDE切替付可変NBの効きは740/750が他社機を圧倒してたように思う。RFスピーチプロセッサとモニターも内蔵しており、実戦機としては手堅く使えた。
  • なお、IC-741はジェネカバを搭載させたがために、内部妨害の増加・多信号特性の悪化など、受信性能が相当犠牲になったという話を聞いたことがあるが、並べて比較したことがないのでわからない。

操作のクセはありまくりなので、素人が今入手して使うにはお勧めできない。ただしS/Nがかなり良いリグなので、今でも最低限CWフィルターが1本挿さっていればそこそこ使えるはず。ただしCWフィルターのラインナップが現行シリーズと異なる(9MHz IFはFL-45(500Hz/-6dB)など;たしかIC-730と共通)ので、入手難かも。オプションを必死で探して鍛えて使おうとまでは思わないけれど、現在の7MHzでもまずまず快適に運用できるだろう。