駄目社員はむの日記

USO800 certified.

久しぶりの管式リニアアンプ整備。電源まわりを改善する。

このリニアは、その後実戦化間際まで行って結局足踏み状態だったりする。
ご参考:リニア修理PJ カテゴリーの記事一覧 - 駄目社員はむの日記


ちゃんと増幅動作はするのだが、何しろこまったことに、電源投入時によくヒューズが飛ぶ。
定格15A/125Vの30mmヒューズが、2本まとめて飛ぶ。特に、商用電源の電圧が高めな夜間にはしばしば起こる。

特にこの個体で突入電流が多いのは

ただでさえフィラメントを点灯させる直後ラッシュカレントがあるのに、プレート電圧側の電解が思いっきり充電される*1ので、電流ピーク値が高いのだ。
突入電流が高くて切れやすいからといって、安易にヒューズの定格を上げればいいってもんじゃない。それだけ事故の確率が上がる。
また電源投入直後、プレート電圧が一気に3500V(3-500Zのほぼ定格)近くまで容赦なく上がる。慣らし運転なしでフルスロットルってのは球の寿命にもよろしくない。


注意:
以下の改造をそのまま実行するような方はおられないとは思いますが、似たような実験して火事になろうが感電死しようがはむは関知しません。全て自己責任。

ステップスタートを検討してみる。

リニアアンプの突入電流を防ぐ方法はいろいろある*2
ド定番なのは「電流制限抵抗を入れて投入直後に電圧がじわじわかかるようにして突入電流を抑制→少ししてから通常結線に繋ぎ変える」=ステップスタートだ。
ステップスタートにおいて時定数をどう持たせるかの手法にもこれまた選択肢は複数あるが、シンプルにはアナログのタイマーリレーを用いて、電源ラインをガチャコンと切り替えるのが一番容易かつ確実だ。

肝心なのが、ステップスタートを入れる場所。

このリニアの回路図によると、ACコンセント~トランスの配線は以下だ。

電源投入時の動作としては、トランスの前にリレーが入っていて、(インターロックスイッチがONになっている状態に限り)主電源ONとともにリレー接点がONになり、通電される。
ステップスタートのリレーを入れるならこんなまどろっこしい機構が要らないともいえるのだが、リレーの出力と端子盤(電源100V/200V切り替え)の間の配線がぶらぶらしているので、そこをちょん切ってリレー&抵抗をかますとしよう。

こんな感じ。


なお僕はこのリニアをAC100Vでしか使う気はないのでこれで行くが、200V結線でお使いになりたい方は適宜アレンジいただきたい。

部品の選択。

パーツを漁る。

  • タイマーリレーには、都合よく今夏の関ハムで入手した2回路2接点品H3Y-2を用いることにした。AC100-120V用で、0-30sec後に接点が切り替わるタイプ。
    • 『お祭り』のジャンク品価格で数百円だったが、新品で買うと実は3~4000円もするお高い代物だ(ありがてえ)。
    • リレー接点の定格はAC250V5A*3。静状態で切り替えるぶんにはたぶん大丈夫だろう。

H3Y ソリッドステート・タイマ/定格/性能 | オムロン制御機器

  • 電源にシリーズに入れる電流制限抵抗は、もちろんセメント抵抗。あまり抵抗値が高いと発熱がでかいので10ohmにした。20W品を使ったけどたぶん10W品で十分だ。
  • 電源周りの配線なので、短絡は大事故の素だ。リレー回りにはファストン端子+絶縁スリーブを用いておきたい。



配線後、結束しました。

トランスの上空が空いているので、両面テープでペッタリ。

通電。


インストール前に何度もテストをしてから、意を決して繋ぎこんだ。
タイマーのディレイタイムは7sec程度に設定した。3sec設定では、プレート電圧がゆるゆる上がっている途中で切り替わり、急激に電圧が上がるので早すぎる。逆に長すぎるディレイはセメント抵抗の過熱を招くだろう。



Step start of tube linear amplifier
今回のステップスタート導入後は、電源投入直後①Epがいったん2500V位までじわじわと上がり、②すこし落ち着いてから(準静的)、③リレーが切り替わってフルの電圧(無負荷3500V)になる。とりあえず成功だと思う。

テスト用にインターロックを殺してます。高電圧注意!

*1:メンテナンス時に電源のブロックコンデンサを新品に交換したおかげで、めちゃ元気。

*2:最近だと、大電流で使えるNTCサーミスタを使用する、なんて手もある。いずれ試すつもり。

*3:H3Y-4(4回路タイプ)だとAC250V3Aなので、パワフルなアンプだとタイマーの接点容量に注意。