駄目社員はむの日記

USO800 certified.

積みキットくずし:NorCal Power/SWR Meterを作る。(1)

はじめに:NorCalの通過型高周波電力計(パワーメーター)を作ろう。

アマチュア無線QRP(小電力通信)コミュニティにあって、世界屈指のアクティビティを誇るのが、NorCal QRP Club。
自分らで企画したキットを世界中に頒布しQRP活動を啓蒙しちゃうほどに元気な彼らだが、数あるキットのなかで、たぶん日本で作った人がほとんどいないと思われるのがこちらだ。
NorCal QRP Club - NorCal Power/SWR meter


HF (160m~10m)、0.1-9.9Wの電力を測定できるという。キットとしてはとうの昔にディスコンだ。
10W未満の空中線電力で、出力を表示させつつ運用する場面というのがあまり想定できなかったからかどうか、組み立てぬまま長期間眠らせてしまっていた。

組立マニュアルには丁寧に動作原理が記載されている。

回路の主要部を抜き出す。

Cited from the link above.
「検出部」の後段にOPアンプを一段かまし、あとはPIC 16F690に叩きこみ、キャラクタ液晶に表示させている。シンプルにしてプローブンな構成だ。

このキットに用いられている電力検出方式は

Tandem Match(タンデムマッチ)ないしは、Stockton Bridge(ストックトン・ブリッジ)と称される。後者は、David Stockton氏(G4ZNQ)によるものだかららしい。
基本的に電流トランスを用いるタイプの通過型電力計は、「キャパシタンス(C)と相互インダクタンス(M)で結合してそれぞれ高周波電圧・電流を引っ張ってくる」には変わりない。

恥ずかしながら、僕は「Stockton型パワーメーター」と聞いてもイマイチピンとこなかった。Stockton方式では、周波数依存成分を巧妙に打ち消しているおかげで広帯域かつ安定な電力測定ができるのだそうだ。原理的には巻数比の2乗分の1の電力を取り出せるので、このキットのように10W maxの電力計を作りたいなら、巻数1:10で1/100の電力を引っ張れば十分で、>100W maxなら大き目のフェライトコアにもっと巻数比大きく巻けばよいのだろう。


Stocktonタイプに限らず、HF用の方向性結合器(方結;Directional Coupler)に関する記事はごろごろしている。読んでたらきりがないのが、以下あたりが参考になる。
A BI-DIRECTIONAL INLINE WATTMETER(オリジナルの記事?)
K6JCA: Notes on Directional Couplers for HF
KN9B - SWR Meter
Razzies 2018Sep
A 250Watt PEP SWR and Power Meter for HF.

日本国内の自作記事・自作例では

リングコアを1個用いて電力を検出する、CM型方向性結合器(いわゆる「CMカップラー」)が主流だ。Stockton型の自作例にはあまり見覚えがない。




ちなみにCQ出版社「アンテナ調整ハンドブック」(1992)などでは、「ツイン・トランス型SWRメーター」として紹介されているみたい。
同書には「トリオのPF-810にも採用されていた~」との記載があるので、進行波電力・反射波電力を同時に測る、割と古典的な通過型電力計の検出方式ではあり、きっとメーカー製などには使われてきているのだろう。

それはそうと、積みキットをくずそうではないか?




や、何年眠らせとったんや・・・*1
(つづく)

*1:キットのマニュアル発行日は2008年10月。我ながら、よくもまあ長きにわたり積んだものだ。買ったのはきっと白耳義駐在前だろう。