渋いリグだが、操作性・機能に申し分なく、今でも十分使いこなせる当時の中型・高級機。
小型機を二まわりぐらい大きくしたサイズに、申し分ない高級機の全機能が凝縮されており、80年代ペディション*1の定番機だった。
- DFM*2の思想による広ダイナミックレンジを世に問うた初のリグ、で正しかったかな。ダイオードミキサーを採用した740, 730と異なり、1st mixerがゲート注入の2SK125パラとなる。プリアンプを入れなくとも感度良好、多信号特性もまずまず良好。AGCにPINダイオードを採用した走りでもある。PBT/NOTCHの効きは740より上だが、740よりもノイズは多めの感触。多分今後書いてくと思うけど、IC-750の受信機の回路構成は80年代中盤〜末の後の高級機〜コストダウン機に受け継がれており、まだまだ回路としては荒削りだが、原点。
- 当時のICOMの音作りの典型なのだろうか、受信音はSSB/CWともにとても硬いため聞き取りやすいが、聴き疲れのしやすさとトレードオフではある。特にCWの受信音は独特の”重みのある”トーンであり、なかなか聴き応えあり。
- フルブレークイン可。750→750Aになって、CWフィルターは9MHz帯/500Hz標準装備・キーヤーが標準内蔵となり、オプション無しの単体で最低限CW運用する上で困らない機能は有していた。
- SSBフィルターの特性としてIC-750/760内蔵の9MHz, 455kHzのフィルターの組み合わせを最高と評する人もおり、わざわざ750から取り出してIC-760PROなどに換装している方もいたらしい。他社機では、中級機クラスでも455kHz IFのSSBフィルターが切れ味の甘い村田製セラミックフィルターの標準採用が普通だが、本機ではクリスタルフィルターを採用しているため明らかに信号のキレが良く、結果的にバンドが広く感じられた。
- PLLの動作、というかVFO操作全般のキワドさが気になるIC-720や740からすると操作性は格段に改善された。ようやく[M>VFO][A=B]キーが装備され、今時のリグと感触はあまり変わらないが、ただVFOノブは少々安っぽい。
- 無骨なフロントパネルは、見た目の古臭さを感じさせる。昨今の高級機からするとかなりシンプルで、直感的に操作できる。狭いフロントパネルの割に、操作性がさほど悪くないのが不思議。ただし、アッテネータ・プリアンプ・モニターなどのよく触るスイッチ・ツマミがフロントパネルではなく筐体上部についているのだけが気になる。
750は、80年代のリグの中で12V動作する最も優れたリグの一つだと思われる。750及び後継機760/760PROとも、状態のいいものが安く手に入るなら、買って実践的に使う価値は十分にあると思う。