駄目社員はむの日記

USO800 certified.

某所でケンウッドのHF機、それもコンパクト機列伝な談義。

  • TS-430SはPLLコンパクト機の初代機で、48MHz/8.83MHzのダブルコンバージョン。シングルコンバージョンでアナログVFOのTS-120S/TS-130Sとはまるで別物の性能だけど、まだまだ洗練には程遠く出来は今一つ。既に、よく言えばノスタルジックな鑑賞用、悪く言えば実践的に使う気にならないリグになりつつある。
    • PLLノイズが多かったりして復調音がノイジー。テンキー風キーがあったけど、操作性は悪かった。プログラムスキャンなど、いろいろ機能をつけようと頑張ったのは解るのだけど、出来がタコでほとんど使い物にならない。
    • 120S以降のIFシフトに加えて、効きの甘いAFノッチも内蔵。ノイズブランカーは呆れるほど効かなかった。
    • ただ、受信音は結構穏やかで聞きやすかったりする。TS-440Sのカリカリ音に比べるとずっとマシだ。
  • TS-440SはFT-757GXやIC-740あたりをかなり研究したフシがあり、430Sを相当しっかりブラッシュアップしたトリプルコンバージョン機だった。性能から機能・操作性まで、あらゆる意味で同クラスのFT-757やIC-730を大きく引き離し、コンパクト機の実践機に躍り出た。
    • コンパクト機としては、トリプルコンバージョンであること自体は余り真新しくはなかった*1のだが、100chのメモリー・アンテナチューナー内蔵・8.83MHz(2nd IF)のクリスタルフィルターの切り替え(2本積めて、ロータリースイッチで切り替えが利いた)は、発売当時(1985年)にはセンセーショナルだった。フルブレークイン装備だが、PLLの動作が鈍いせいか動作は少々キワドイ。
    • 分割数の多いトップフィルターがしっかりしてたし、混変調が少なくまずまず良好な実戦機だった。ケンウッドのコンパクト機史で、初めてローバンドで実践的に使えるようになったHF機かもしれない。けどフィルターの通過帯域が狭くハンパに切れすぎるため、受信音は高域がうるさくカリカリしていた。
    • 操作性と基本性能がかなりよかっただけに、もしももう一声混信除去機能があり、あとノイジーで甲高い受信音でなかったら、コンパクトHF機の名機と賞される資格はあったはずと惜しまれる*2
  • まあいちおう、TS-140Sというのもあった。
    • TS-680Sから50MHzを差っぴいたものだった。
    • フルブレークインがついてることと、イージーオペレーションで操作性がいいことはある。
    • 受信部の出来は誉められるところがほとんど無い。70MHz→455kHzのダブルコンバージョンで、455kHzの2nd IFのみにフィルターを内蔵できる。感度が良いってだけで、選択性は悪い・ノイジー・かつTS-120/130級に混変調に弱い・弱い信号はとことん了解度が悪くて拾えない・・・と全くいいところが無く、今更入手して使おうとは決して思わない。ローバンドどころか、ハイバンドでも少し混み合うとしょっちゅう混変調を起こすという、とっても残念な受信性能のリグだ。
  • TS-450Sは440Sを更にブラッシュアップし、操作性が更によく、割と静かな受信部を持つコンパクト機となった。
    • ノイズブランカーが2モード化。フィルターの切り替えも8.83MHz・455kHz両方出来るようになった*3。ミキサーのブラッシュアップのためか受信のフィーリングが良く、音も柔らかいので、致命的欠点がないリグだった。
    • アンテナチューナーの出来はずっとよくなった。何故かフルブレークインが消えたし、相変わらずキーヤー非内蔵だったのでCW運用には微妙だった。
    • けれど当時のラインナップでは、もう少し足せば「基本性能が圧倒的によい実戦機」TS-850Sや、「同サイズ・同デザイン・同じ性能のHFに加えて6mが付いたお得感あるミドルスペック機」TS-690Sを買えたので、可哀相な存在だったような*4

つづき。

  • TS-430〜450は、スピーチプロセッサがAF型、キーヤー非内蔵、混信除去がIFシフトは共通。
    • 他社機(特にアイコム)よりも全般に感度が低いのと、あとPLLがアンロックを起こしやすいのも共通(^^;
  • ケンウッドの8.83MHz帯(2nd IF)のオプションクリスタルフィルター
    • TS-120/130/440(全固定機であればTS-830以降TS-930の前まで?)までがYK-88C(CW), YK-88CN(CWナロー) YK-88S(SSB), YK-88SN(SSBナロー)など。
    • 450以降(HF機全体としてはTS-930以降)はYK-88C-1など、それぞれの型番に”-1”がつく。フィルタの構造 or 中心周波数が違うのかも知れないが詳細不明。
    • 440/450は8.83MHz帯にマトモなフィルターが入っていないので、本格的にSSBで運用する場合にはワイドのSSBフィルターを積んでおくとサイドが良く切れ、IF SHIFTの効果も俄然向上するため、受信性能が別物になる。

TRIO/Kenwoodのコンパクト機を今になって使おうと考える場合、趣味でのQSOやメンテ遊びならTS-120/130も面白いけど、本気でHFをやろうとすると440S以降かなぁ*5。マイクとエレキーを接続すると、たいていの運用には困らないはずだ。
SWLerが短波ラジオ・通信型受信機として使う場合も、KENWOOD最後の名機?R-5000とHFの受信部が近いTS-440以降の方がいいと思う。


あとは、俗に”600番台”と呼ばれる50MHz+HFトランシーバー・TS-600シリーズの流れ(TS-600→TS-660→670→680→690)もあるけど、その件はまた別の機会にでも。

*1:コンパクト機で455kHzの3rd IFがついたのはFT-757GXが最初かな?;トリプルコンバージョンのコンパクト機の登場はFT-757GX→TS-440S→IC-731の順と記憶している

*2:当時、他社機の混信除去機能は、真の実戦機から見ると出来はオモチャではあったものの、仮にもFT-757GXはWIDTH(PBT)/IF SHIFT、IC-731はPBT/IF NOTCHを搭載していたので、IF SHIFT/AF NOTCHしか内蔵してなかった440は見劣りがした。

*3:TS-440Sは8.83MHzにしかオプションフィルターを積めなかった。

*4:ちなみに出身高校のJA8YAGにはTS-690Vがありました。立ち位置として弱かったからか、同世代のTS-950, TS-850, TS-690, TS-450の中で450が一番最初にカタログ落ちしたんだっけな。

*5:ただ、8.83MHzのSSB/CWフィルターが入っていない440/450は本気で使う気になれないけれど