駄目社員はむの日記

USO800 certified.

それはそうと、トランスバーターである。

故あって、東京ハイパワー(TOKYO HY-POWER) のHX640というトランスバーターが舞い込んできた。

そもそもトランスバーターという言葉自体が、アマチュア無線界において最早死語も同然である。

かつてHF機のラインアップとしては、「親機(HF機など)」+「トランスバーター」で他の(普通は6m以上の)バンドにも出られるのが定番であった。
トランスバーターは自作・キットから大手メーカー製までいろいろなものが存在したが、トランスバーター構成の大半はHF機を親機とし、28MHzをIFにして6mや2mに出るものだった。下から上の周波数帯に変換するものはアップバーター、その反対がダウンバーターと称される。


しかし今は1.8MHz〜430MHzが超小型ハンディ機に収まってしまう時代であり、GHz帯に出ようとかいう場合を除くと、トランスバーターなどそう使う機会はない。

で、話は戻って、この家出娘HX-640。


こいつは90年代に発売されていた、6m機を親機にしてHF(3.5/7/14/21/28の5バンド)に出られるという非常に珍しいトランスバーターだ。入力は2.5W/10W切り替え。バンドにもよるが、HFでの出力は30-40Wぐらい出るらしい。
おそらくは「(FT-690mk2的な)6m オールモード・ポータブル機を親機にして、HFに出てみてね!」といった開発コンセプトだったのだろう。古いCQ誌をひもとくと当時の定価は39,800円、おそらく実売は3万円代前半だっただろう。
唯一無二に近いアクセサリーだったのは確かだが、6m機しか持ってない若手ハムが多かった70〜80年代頃ならいさ知らず、当時すでに市場に受け入れられたとは到底思えない。

東京ハイパワー、当時の謎なトランスバーターラインアップ。

  • HX-640の直接の姉妹機はHX-240であり、型番が示す通り、2m機を親機とする代物。
  • さらにはHX-640とちょうど反対の6m→28MHzトランスバーターであるHX-650も存在した。こちらは(HF+6m機が少なかった)当時、「高級HF機のフィーリングのままに6mにも出たい」という一定層はにそれなりにウケた印象がある。

#もしも28MHzを親機に6m/2m両方に出られるトランスバーターがあったなら、僕は当時迷わず買った。

ひとまず動作確認。

で、10年は優に眠ってたこの個体。そもそも動作するのだろうか?

通電の前に内部を確認。東京ハイパワーさんらしい基本に忠実で丁寧なつくりである。


とりあえず繋ぎこむ。

  • 今時の某リグ(HF+50MHz)を親機にしてアンテナも繋ぎ受信してみると、普通にHFが受かる。
    • 親機の表示部には「50.1xxxxxMHz」が表示されているというのに電波型式がLSBな上、そいつで7MHzの喧騒が聞こえるというのは、今時だとちょっぴり不思議な体験ともいえる。
    • いや”HFも内蔵しているリグ”を親機にしてわざわざ6m→7MHzのクリコン遊びをやっている自分の行動に、疑問を感じずにはいられない。ある種常軌を逸している。ネタに走っているとしか思えない。
  • ダミーロードに向けて送信すると、これまた送信もあっさりできちゃった。

ああ、なんということだ。企画は、図らずもメンテなしのままにいきなり終わってしまった・・・

余禄:今時、トランスバーターってどう使いこなす?

現代において、敢えてこのトランスバーターを使うという状況が、すぐには想像できない。

  • そもそも、今時のHF機にはほぼ必ず50MHzがついているわけで。今時のリグに付加するという使いどころは皆無だ。
  • 今の時代、”6m専用機しかもってない”なんてストイックな人、かなり希少価値だろう。6m専門に運用されている方でも、今時のリグにはHFがついてきているのだから。
  • 古HF機もこだわらないで選べば1万から存在するので、「HF出たきゃHF機最初から買えよ」である。
  • そもそもこのトランスバーター、SSBはLSB/USB両方吐けることを親機に要求する。
    • SSBがUSBしか発射できない6m専用機の大半(ハンディ機などシンプル機)を親機にすると、HFにダウンコンバートしても、逆サイドバンドとなるローバンドのSSBに出られず、HFの運用はハイバンドに限られる(もちろんCWとAMで使う分には問題ない訳ですが・・・)。
    • 具体的には、初代FT-690はNGだけどFT-690mk2やIC-505は行ける。TR-9300のような中級オールモード機クラスになるとLSBモードがちゃんとある。
  • 一応キャリコンがついているが、動作点が今一つで、SSBだと送受信が頻繁に切り替わる。
    • SSBの安定な運用のためには、親機からスタンバイ端子を繋ぎこんだとうがよさそう。
    • 最悪、送信時にプリアンプを焼く可能性がある。キャリコンでSSB運用するしかないならばプリアンプは切ったほうが安全。

うーん。これ、今時どう使えと?

無理矢理考えてみた。

  • 6m機で短波を聞くためのクリコン(受信コンバーター)として使う。FT-690でSWL、みたいな?
  • トランスバーター部分を引っぺがし、HF機用50W級リニアアンプ部分だけ動作するよう改造。
  • 古典的な6mの名機(や6m+一部のHFバンド機)につないで活用する。IC-575・FT-655・TS-670あたりならそこそこ使い物になるかも。いや、それでも骨董趣味的でしかないかな・・・
  • 古いHF+6m 10W機(IC-726SやTS-680Vあたり)やFT-817のようなQRP機をを親機にして、HFで40W機を出せるようにする。HFにおいて30-40wはいっぱしの出力だからね。
  • ミズホ通信ピコ6や、東京ハイパワーのHT-750を親機にしてマルチバンド化・・・とか?
    • ピコを親機にして色々出てみるのは、ミニマルで面白そう。ローバンドでSSBに出られないのが少々残念だけど、「ピコ+トランスバーターでDX」とかちょっと乙じゃない?
    • 図らずも同メーカー製のHT750は7/21MHzで3W、6mで2W出るので、親機にぴったり。特にHT750はもともと7MHz入りなおかげで50MHz LSBを出力できる。

でもまあないな・・・(汗
もしジャンクとして入手したならば、迷わずパーツ取りとすべき。2SC1969x4や2SK125をはじめとして、当時の定番パーツ満載だ。